「シュッツってどんなひと?」第3回

BCJ ハインリヒ・シュッツ 公演前 特別企画

「シュッツってどんなひと?」

お話:佐藤望先生(慶應義塾大学教授)

 

〜第3回 バッハとの共通点~音楽の高みをめざして~

バッハ・コレギウム・ジャパンの11月定期公演「主に感謝せよ、その慈しみはとこしえに〜ダビデ詩編(抄)〜」公演前特別インタビュー「シュッツってどんな人?」。慶應義塾大学の佐藤望先生に4回にわたってお話を伺います。

第3回となる今回はシュッツとバッハ、異なる時代に生まれた二人の音楽家の相違点を見ていきます。

 

 

―― シュッツとバッハ、同じドイツ出身の音楽家ですが二人の音楽に共通点があるとすればそれはどんなところでしょうか。

佐藤 そうですね、二人の音楽の共通点を探し出す前に、まずは二人の生きた時代の信仰に対する感覚の違いを見てみましょう。

シュッツの時代には、宗教に対し個人的な感覚を持つということがあまり一般的ではありませんでした。宗教は個人的なものではなく、人は領主の信仰に従うのが当然でした。ルターの宗教改革後、特に1555年のアウグスブルクの和議以降は「宗教体制化( Konfessionalisierung)」の時代といわれています。国家と教会の結びつきが強く、人々の生活様式もまた芸術もは宗教的な教条を基盤に形成されていました。

前回お話したように「ダビデ詩編集」は1617年、ドレスデンで行われたルターの宗教改革百年祭に合わせて書かれたものですが、この行事にはハプスブルク家の神聖ローマ皇帝も訪れており、まさしく国の威信をかけた祝賀でした。ドレスデンのザクセン選帝侯からしてみれば皇帝への忠義の表明に加え、ザクセンがハプスブルクにも劣らない国力を持つということを誇示する絶好の機会でもあったのです。イタリアで最新の音楽を学んだ若き楽長シュッツに寄せられた期待は、大変大きなものだったことでしょう。

とはいえシュッツが政治的な思惑を胸に音楽を創造したということはおそらくありません。あくまで与えられたタラント(神の恩寵としての才能)を神や神に権威を与えられた為政者であるザクセン選帝侯に返すというプロテスタント的信条によって、最高の音楽を紡いだのだと思います。

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佐藤望先生

 

―― これに対しバッハの時代の信仰というのはどう変化したのでしょうか。

佐藤 バッハの時代になると、信仰は個人の心の問題という考えにだんだん変わっていきます。シュッツにとっての音楽は自己を表現する道具ではなく、ひたすら神と主君に忠実に仕えるためのものでしたが、バッハの場合は神に対する自身の内面性がより音楽の中に表れているといってもいいかもしれません。バッハが親しみやすい旋律の音楽を多く描いたのに対し、シュッツが抑制の効いた音楽を多く創造していることも、音楽と内面性に関する時代の感覚の違いが影響しているのかもしれません。

 

―― 時代の違いが音楽の表現方法にもあらわれたことでしょうか。

佐藤 そうですね。もちろん2人とも両方の側面をもっていて、バッハも同時代の作曲家と比べるとシュッツに近い保守的な作曲家と言えると思います。この二人の音楽に対する根本的な感覚は非常に近いと思います。彼らにとっての音楽とは天と地、宇宙を満たすものであり、神の栄光を表すもの。また天や地の叫び、神との対話など、神の住まう宇宙を「音楽」で具現化する才能を持っていた点も共通していると思います。

特にシュッツは亡くなった人に対する意識が強く、魂が解放され神の国へ引き上げられていく、その天上の情景を表現するため、追悼の音楽に力を入れた作曲家でした。時代の違いこそありますが、共に神の世界へ近づくため優れた音楽を生み出し続けたという点では、この二人は非常に共通しているのではないでしょうか。

 

最終回はこちら

 

第1回はこちらから https://bachcollegiumjapan.org/110-interview-vol1/

第2回はこちらから https://bachcollegiumjapan.org/110-interview-vol2-3

 

神戸公演1026

公演情報はこちらから↓
https://bachcollegiumjapan.org/

<バッハ・コレギウム・ジャパン 定期公演>
主に感謝せよ、その慈しみはとこしえに ~ダビデ詩編(抄)

ハインリヒ・シュッツ
ダビデ詩編歌集 Op. 2より
第21番「涙をもって種を撒くものは」SWV42(詩編第126編)
第24番「主に感謝せよ、その慈しみはとこしえに」SWV45(詩編第136編)
第26番「主に向かって、喜ばしき声をあげよ」SWV47 他
シンフォニエ・サクレ 第2集 Op.10より
「神よ、立ち上がって、その敵を散らし」SWV356(詩編68編)
「主に向かって新しき歌を歌え」SWV342(詩編96編)
ザムエル・シャイト
ベルギー風カンツォン
カンツォン・ベルガマスカ 他

指揮:鈴木雅明
ソプラノ:松井亜希、藤崎美苗/アルト:青木洋也/テノール:谷口洋介/
バス:渡辺祐介
コルネット&トロンボーン:コンチェルト・パラティーノ
合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン

<第232回神戸松蔭チャペルコンサート>
2014年11月22日(土)開演3:00PM 開場2:30PM
神戸松蔭女子学院大学 チャペル

料金:
1階指定:8,000円(ペア前売: 15,000円 BCJチケットセンターのみ取扱い) 2階立見席:4,000円(限定30席)

プレイガイド:
◎バッハ・コレギウム・ジャパン チケットセンター 03-5301-0950
◎イープラスhttp://eplus.jp/sys/T1U89P0101P006001P0050009P002002843P0030126P0006
◎ローソンチケット 0570-084-003 [Lコード58472]
http://l-tike.com/pc/d1/AA01G04F1.do?txtEvtCd=58472&txtPerfDay=20141122&txtPerfSeq=+&venueCd=50687&srcID=AA02G08

<第110回東京定期演奏会>
2014年11月24日(月・休)開演3:00PM 開場2:30PM
東京オペラシティコンサートホール:タケミツメモリアル

料金:
S:8,000円(ペア前売: 15,000円 BCJチケットセンターのみ取扱い) A:6,500円 B:5,000円

プレイガイド:
◎バッハ・コレギウム・ジャパン チケットセンター 03-5301-0950
◎東京オペラシティーチケットセンター 03-5353-9999
◎チケットぴあ 0570-02-9999 [Pコード230-601]
http://ticket.pia.jp/pia/event.do?eventCd=1417402
◎イープラス
http://eplus.jp/sys/T1U89P0101P006001P0050009P002002843P0030129P0006
◎ローソンチケット 0570-084-003 [Lコード35916]
http://l-tike.com/pc/d1/AA01G04F1.do?txtEvtCd=35916&txtPerfDay=20141124&txtPerfSeq=+&venueCd=33913&srcID=AA02G08
◎ヴォ―トル・チケットセンター 03-5355-1280