「シュッツってどんなひと?」第1回

BCJ11月定期 ハインリヒ・シュッツ 公演前 特別企画 インタビュー連載
「シュッツってどんなひと?」第1回
お話:佐藤望先生(慶應義塾大学教授)

~第1回 シュッツの時代に耳を傾けて~
バッハ・コレギウム・ジャパンの11月定期公演は「主に感謝せよ、その慈しみはとこしえに〜ダビデ詩編(抄)〜」と題し、ドイツ音楽の父とも呼ばれる、ハインリヒ・シュッツを取り上げます。とはいえバッハに比べ、私たちにとってなじみの薄い作曲家。彼はどんな人生を歩み、どんな音楽を描いていったのでしょうか。慶応義塾大学の佐藤望先生に4回にわたってお話を伺います。

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ハインリヒ・シュッツ (1585 〜 1672)

 

―― シュッツはどんな時代に生まれた作曲家なのでしょうか。
佐藤 シュッツは1585年、中部ドイツの田舎町ケストリッツに生まれました。バッハが1685年生まれですから、バッハからちょうど100年前の人ということになります。

―― バッハより100年も前というと、非常に昔のように感じますね。
佐藤 そうですね。同じバロックでもモンテヴェルディは聞いたことがあっても、シュッツは知らない、という方も多いのではないかと思います。
彼は非常に長生きをした人でもあり、初期はイタリア留学の影響を受けた華やかな作品、間に大きな戦争を経験し、後期では今までにないタイプの作品も書いています。その時代によってバラエティに富んだ音楽を書いているのですが、初めて聞いた方には少し単調に感じる方もおられるようですね。

―― それはどういった理由からでしょう?
佐藤 これは私たちの耳に原因があります。ひとつめは音楽体験の変化です。もともとシュッツを含め、昔は聴き手は演奏者と直接向かい合って聴くしか音楽を聴く方法はありませんでした。それが時代は変わりレコードやCD、最近ではインターネット上の動画サイトや、スマートフォンなどからイヤホンで聞くということが主流になってきています。シュッツは当然、生で聞くことを前提にして音楽を書いているわけですから、イヤホンで聞いたのでは彼の音楽がもつ空間性や語りといった本来の要素があまり伝わらない。それが単調に感じることにつながっているかもしれません。
現代は音楽のコピーをも「音楽」と呼んでいるわけですが、録音はやはり録音でしかありません。シュッツの時代の音楽のあり方をもう一度、感じていただきたいです。
もうひとつは現代の私たちが様々な音楽を知ってしまっているということです。私たちはひとくくりにしてクラシック音楽と呼んでいますが、シュッツとバッハですら100年離れているわけです。シュッツの時代にはない後世の音楽と比べるのではなく、その時代に思いをはせながら聞いて頂けるとうれしいのですが。

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佐藤望先生

 

―― 聴き手がシュッツの時代の音楽のあり方を理解することがシュッツの音楽の素晴らしさを理解することにも繋がるのですね。
佐藤 そうです。バッハ・コレギウム・ジャパンの演奏会にいらっしゃる皆様はバッハを良くご存知だとも思いますが、最初は器楽曲から入りそこからカンタータなど声楽曲に興味をお持ちになった方も多いと思います。声楽曲しか残していないシュッツの音楽はわかりにくいという印象があるかもしれません。しかし、シュッツの音楽はやはりすごいんです。
シュッツの音楽の素晴らしさを言葉で言い表すというのは非常に難しいのですが、私自身、シュッツはバッハと同じくらい優れた感性と知性を持った作曲家であると考えています。今回の公演を通じ、雑音によって現代人の私たちが聞こえなくなってしまったものを取り戻し、そして魂を揺さぶる真の音に耳を傾けて頂けたらと思います。

<取材・文/石山 真紀>

2回目はこちら

 

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公演情報はこちらから↓
https://bachcollegiumjapan.org/

<バッハ・コレギウム・ジャパン 定期公演>
主に感謝せよ、その慈しみはとこしえに ~ダビデ詩編(抄)

ハインリヒ・シュッツ
ダビデ詩編歌集 Op. 2より
第21番「涙をもって種を撒くものは」SWV42(詩編第126編)
第24番「主に感謝せよ、その慈しみはとこしえに」SWV45(詩編第136編)
第26番「主に向かって、喜ばしき声をあげよ」SWV47 他
シンフォニエ・サクレ 第2集 Op.10より
「神よ、立ち上がって、その敵を散らし」SWV356(詩編68編)
「主に向かって新しき歌を歌え」SWV342(詩編96編)
ザムエル・シャイト
ベルギー風カンツォン
カンツォン・ベルガマスカ 他

指揮:鈴木雅明
ソプラノ:松井亜希、藤崎美苗/アルト:青木洋也/テノール:谷口洋介/
バス:渡辺祐介
ツィンク&トロンボーン:コンチェルト・パラティーノ
合唱・管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン

<第232回神戸松蔭チャペルコンサート>
2014年11月22日(土)開演3:00PM 開場2:30PM
神戸松蔭女子学院大学 チャペル

料金:
1階指定:8,000円(ペア前売: 15,000円 BCJチケットセンターのみ取扱い) 2階立見席:4,000円(限定30席)

プレイガイド:
◎バッハ・コレギウム・ジャパン チケットセンター 03-5301-0950
◎イープラスhttp://eplus.jp/sys/T1U89P0101P006001P0050009P002002843P0030126P0006
◎ローソンチケット 0570-084-003 [Lコード58472]
http://l-tike.com/pc/d1/AA01G04F1.do?txtEvtCd=58472&txtPerfDay=20141122&txtPerfSeq=+&venueCd=50687&srcID=AA02G08

<第110回東京定期演奏会>
2014年11月24日(月・休)開演3:00PM 開場2:30PM
東京オペラシティコンサートホール:タケミツメモリアル

料金:
S:8,000円(ペア前売: 15,000円 BCJチケットセンターのみ取扱い) A:6,500円 B:5,000円

プレイガイド:
◎バッハ・コレギウム・ジャパン チケットセンター 03-5301-0950
◎東京オペラシティーチケットセンター 03-5353-9999
◎チケットぴあ 0570-02-9999 [Pコード230-601]
http://ticket.pia.jp/pia/event.do?eventCd=1417402
◎イープラス
http://eplus.jp/sys/T1U89P0101P006001P0050009P002002843P0030129P0006
◎ローソンチケット 0570-084-003 [Lコード35916]
http://l-tike.com/pc/d1/AA01G04F1.do?txtEvtCd=35916&txtPerfDay=20141124&txtPerfSeq=+&venueCd=33913&srcID=AA02G08
◎ヴォ―トル・チケットセンター 03-5355-1280